とある田舎町に一軒の寂れたディスコがあった。30年ほど前、ディスコブームに沸いた1980年代初頭に開業した店は今、訪れる客も少なく、ほとんど開店休業状態だ。マスターはアフロヘアーがトレードマークなのだが、実はヅラで、頭髪は店同様寂しい限りである。友人達は、こんな店早くつぶして商売替えしろと勧めるのだが、マスターはなかなか首を縦に振らない。何故ならば、そのディスコを愛してやまない客たちが数人いるからだ。ダンス好きの市役所職員、高校教師、農家の長男、小料理屋の女将、結婚記念日に必ず訪れる老夫婦など、個性溢れる面々が踊りにやって来る。彼らのダンスは決して上手いとは言えない。しかしその不器用だが情熱的なステップからは、それぞれの人生が垣間見えるようだ。不景気で退屈で窮屈な田舎の生活の中で、自分なりの人生の楽しみ方を見出そうとしている人々。彼らは、自らをこう呼んでいる。「ソウルマン」。 |